幸兵衛滝
 2003年秋の東北その2 その3へ




幸兵衛滝
午後3時を過ぎていたので、
半分が日陰になってしまった。
この写真の部分は上三分の一くらい。
滝の下の部分は
崖から覗き込まないと見えない。




一の滝。
中央に虹がかかっている。
滝つぼからやや高い場所から
沢を挟んで向かい合った場所が
滝見台である。
落差38メートル。





二の滝。
暗かったもので、これしかまともに
撮影できませんでした。
真四角に見える最下段は、
とても優美に流れている。
かろうじて、上の段が見える。
落差20メートル。





で、これが幸兵衛滝の上の
3分の2くらい。
あまりにコントラストが強すぎて、
明るい場所がとんでしまった。




滝のまわりの紅葉をいくつか。








これは、遊歩道の途中の紅葉。
自然の美学には脱帽です。
2003/10/11 幸兵衛滝(108メートル)   秋田県阿仁町
昼食をとるために立ち寄った道の駅「あに」(マタギの里)で、秋田市にお住まいの鷲谷勝洋さんというアマチュア写真家の阿仁町の滝の写真が展示されていた。阿仁町にはたくさんの滝があり、百名滝の一つでもある安の滝はその代表とも言えるだろうが、しかし、鷲谷さんの写真の中で一番目を引いたのは、幸兵衛滝だった。
これは、見てみたい。
事前に阿仁町のホームページで安の滝について調べていたのだが、同じページに幸兵衛滝についての説明もあった。場所は安の滝のすぐそば。一番奥の幸兵衛滝まで駐車場から35分となっている。うむ、楽勝コースではないか。これは行かない手はない。
安の滝の林道から県道308号に戻り、国道方面ではなくて、反対側に自動車を走らせた。ほどなく幸兵衛滝へ行く林道が現れる。林道に入ってしばらく進むと水尻の滝へと向かう道と分かれるが、まっすぐに進む。林道の終点に駐車スペースがある。最初に見える駐車場は第二という感じで、さらに登るとすぐに一番近い駐車場に出る。ここには簡易トイレもあった。
時計は午後3時をまわっている。秋の日差しはすでに傾きはじめている。
上のスペースと下のスペースを合わせると駐車場は50台くらいは駐車できそうだが、安の滝と違って止まっている自動車は7、8台。これはゆったりと滝を見ることができそうだ。
歩きはじめるとすぐに綺麗な沢を橋で渡る。それからまた、今度は丸木橋のような橋を2つほど渡る。ものすごく無造作にワイヤーでとめられた橋だ。こ、これはもしかしたら、アドベンチャーな道のりか?
 
滝への遊歩道の入り口。熊に注意。

   
 
アドベンチャーな丸木橋。どうして折れ曲がって作っているかなぁ。

  
努力と忍耐の登り。左下にダンナがいる。
半分期待したが、その期待は裏切られた。アドベンチャーどころか、努力と忍耐の道のりだった。つまり、単調な山道をもくもくと登るのである。しかも、かなり急激に高度を稼ぐ登りである。あっと言う間に息があがる。時間的には10分だが体力的には30分くらい歩いた気分でまず一の滝に到着した。
うわわわわわ。ものすごい。目の前が全て滝になってしまった。
午後の光が滝全部を照らし出し、虹を作っている。まるで映画館の巨大スクリーンのまん前に立ってドアップの滝を見ているような錯覚さえ感じる。ああ、私たちは神様に祝福されている。安の滝にも虹。ここでも虹。ものすごく感激した。
が、神様の祝福を感じたのはここまでだった。
一の滝の落差は38メートル。しかし、垂直の崖を勢いよく滑り落ちている様は、100メートル級の迫力を感じる。
ちょうどおばさん3人組が滝の前で休んでいて、思わず綺麗ですねと声を交し合ってしまった。
しかし、日が急速に傾きかかっている。のんびりはできない。私たちが先に進むと、おばさんたちが「登るんだ」と驚いたような声で送ってくれた。
その登るんだの言葉の意味をすぐに実感する。なんと、滝のすぐ横の道を滝の分だけ登るのである。全部上りである。当たり前なのだが。その代わりに、滝を真横から見ることができる。これはすばらしい。水の流れが迫力満点で迫って来る。ぜいぜい言いながら写真を撮影。またぜいぜい言いながら登る。
 
真横から見た一の滝。岩盤が黒々として、綺麗だ。

 
同じ場所からの滝つぼ。岩盤は柱状摂理だそうだ。
HPの案内では一の滝から二の滝までは10分とあったが、20分かかる。写真を撮りながらだが、我々の足はそんなに遅くないので、ここでHPの表記に疑問が湧く。ついでだが、二の滝への道の途中で中滝の滝見台への道が分岐している。そこに二の滝へ650メートル、幸兵衛滝まで750メートルとある。この表記も大いに疑問である。何度大嘘つきと言ったことか。とにかく、登ったり下ったりを繰り返しつつ歩いて行く。
 
これが中滝への分岐にある道しるべ。大嘘つき〜。
二の滝は、すっかり影の中に沈んでいた。
一の滝とちがって、さわさわと流れる優美な滝である。よく見えるのは一番下の部分だけなのだが、上段もあるのがかろうじてわかる。もっと上を見ようと思ったら沢を対岸に渡る必要があるだろうが、その元気はなかった。
さて、この上がいよいよ落差100メートル超の幸兵衛滝である。ふと見上げると転げ落ちそうになって人が降りて来る。そうか、また滝の分だけ登るのね。いいかげん諦めて上り始めた。九十九折で高度を上げていく。かなり登ったときに男性2人とすれ違った。かくのたまう。「まだまだ登りますよ」
わはははは。そ、そうですか〜。彼が言うには彼らが登っていたときにちょうど同じくらいの場所で「もう少しですよ」といわれたけど、とんでもなかったのだそうだ。うむ、覚悟ができた。
そろそろ限界かというあたりで、今度は中高年の団体とすれ違った。そのリーダーらしい男性いわく。「あと一坂、この直線50メートルだけだ」そ、その直線が長いのよ〜。ずーっと登りじゃないのよ〜。
もうやだ、もうだめだ、もう登れないとぶーぶー言いながら進むと、いきなりスパンと終点になった。
上品なご婦人が一人切り株に座っていて、私のぶーぶーを聞いていたらしく、「大変ですよねぇ、ご苦労さま」とねぎらってくれた。ありがとうございます。
てれ笑いしながら顔を上げると、またしても一面が滝だった。
一の滝よりはやや遠いが、対面の山の上からゆるやかに湾曲しながら末広がりに落ちている。半分が影になってしまっているが、滝だけ太陽に照らし出されている。もう少し時間が早ければ滝の上から下まで全て日光が当たっていただろうが、午後4時では半分が日陰になっていた。
 
幸兵衛滝の上部。岩盤の横じまがおもしろい。

 
これは中段。日陰になっている部分。滝はさらに下に続いている。
幸兵衛滝は長い。滝見スペースからは全てが見られない。下の方は覗き込んでも見えない位置にあるのだ。つまり滝見スペースは滝の中腹あたりから滝を見ることになる。何段かになって落ちているのは分かるのだが、滝つぼは見えなかった。ロープが張られている場所から少し降りた場所が滝を見る一番のポイントになる。そのあたりでご婦人のだんな様とおぼしき人が懸命に写真撮影をしていた。我々も撮影。しかし、ロープをくぐって下に行くのは、ちょっと怖い。なにせ坂を上って足がガクガクしている。ガクンとすべってしまうと、滝に転落してしまう。慎重に撮影して、先客よりも先に滝見スペースを後にした。
駐車場に戻ったのは5時少し前。往復で2時間かかっている。HPにあった合計35分というのはあからさまに間違っている。ふと駐車スペースにある案内図を見ると、あらまあ、一の滝へ10分、二の滝へ35分、幸兵衛滝へ45分とある。先にこっちを見ていれば、それなりに覚悟はできたのに。案内図の数字のほうは正確である。
 
正確な時間の書かれた案内図。よく読んで出発しよう(笑)
もうすでに夕暮れになっている。これから、宿まで走らなければならない。
宿は、なんと、日本海沿いの能代市なのである。
どうして、日本海まで戻るのか。
この日の宿がなかなか取れなかった理由もあるが、翌日行く滝に近い所を物色したのだ。弘前あたりに宿がとれれば問題はなかったのだが、どういうわけかどこも満室。翌日その理由を知ることになるのだが、その満室を避けて日本海がわに行かなければならなかった。そして、その能代から北上すると、青森になる。青森県の滝といえば…
交通
我々は出発点が新潟なので、高速道路は利用できなかった。
本文中にもあるように、国道7号を利用して日本海沿いを北上。本庄から国道105号に入った。
地図で見たところ、もっとも近い高速道路のICは、おそらく東北自動車道「鹿角八幡平」だろう。積雪時でなければ、国道341号を南下し、かの「茶釜の滝」の入り口付近を通って宝仙湖のあたりで県道321号に入れば国道105号に出れる。右折して阿仁町を目指し、トンネルをくぐって出たすぐの道を右折する。
大きく「マタギの湯」の看板が出ているのですぐにわかる。まず「マタギの湯」を目指すように進めばよい。
右手に秋田内陸縦貫鉄道の線路が見えて、奥阿仁、阿仁またぎ駅などを通過する。鉄道はやがて道から離れて行く。釣りきち三平のイラストがある施設をいくつか過ぎると、道はいきなり細くなる。
やや走ると安の滝への林道の分岐に出るが幸兵衛滝へはそちらへは行かずに道なりに橋を渡ってさらに進む。少しすると幸兵衛滝へ至る林道が出てくる。この林道を進み、終点が駐車スペースである。林道の途中には水尻滝へ行く分岐もある。
自動車を降りてから先は、登山と思って間違いない。時々ぬかるみを歩くことにもなるので、足回りはきちんとしたほうがいい。また、本当にキツイ登りなので、体力に自信がない人は一の滝であきらめたほうがいいだろう。一の滝だけでも見る価値は充分にある。
リンク 阿仁町

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