んがお工房の桜めぐり


2006年長野の桜めぐり

2006年4月23日(日)

雪が例年より多かった2006年の冬があけ、春が来た。
その積雪のせいで、新潟近隣の桜の開花は若干ながら遅くなったようだ。
勤め人である我々は週末しか出歩くことができず、その週末にジャスト満開となる桜を求めることになる。今年の最初の満開の桜は長野ということになった。だが、広い長野県である。咲いている場所もあれば、散ってしまった場所もある。どこか大きな目玉となる場所はないか。
かねてから行きたい行きたいと思っていた高遠城址が今まさに満開だった。
新潟からは少し遠いが、今行かずにいったいいつ行くのだ。と、いうことで、高遠に決定。
しかし、この桜の名所は観光名所でもあるので、大混雑は必至である。わざわざ新潟から行って渋滞で時間を削るのはもったいない。それを避ける方法は一つである。早朝アタック。
そんなこんなで、ほんの2日前に伊那市のビジネスホテルに予約を入れて、土曜日の仕事が終わってから新潟を出発した。
伊那に到着したのは、午後10時。民宿かと思わせられるくらいのビジネスホテルで即就寝して、翌朝5時半に起床した。
ホテルの別の部屋からすでに出発するらしい音も聞こえる。どうも、やっぱり高遠に行く人たちらしい。高遠城址公園は桜の期間中は午前6時から開いているのである。同じ考えの人はやっぱりいるんだなぁと思いつつ、事前に用意した朝食を食べ、我々も出発。
ほとんど全く渋滞せずに7時前には高遠城址公園に到着した。
駐車場のある場所まで細い道を登って行く。すでに人がたくさん歩いている。ふと見ると、バス専用の駐車場を午前10時までは乗用車にも開放している。そこからなら公園はすぐそばだ。どう考えても3時間も公園で潰すわけがないので、すぐにその駐車場に入れる。10時前には出るようにと書かれたカードをもらって、700円を支払って駐車。うーん、時間制限があっても、料金は同じなのね。
駐車場からもっとも近い西ゲートは8時にならないと開かないので、ちょっと登って北ゲートから公園に入った。
桜の季節には大人一人500円の入園料が必要になる。
       高遠さくらまつりHP



高遠城址公園
定番の桜雲橋の図。
橋が桜の埋もれているようだ。



こちらは、太鼓櫓。
桜の雲の向こうに屋根が見える。
実は人が中に入れて、
窓から身を乗り出していたりする。



タカトウコヒガンは、ピンクが濃い。


ピンクの雲の向こうに
中央アルプスの山々が見える。

まだ7時前だというのに、本当にたくさんの人がいる。
これで団体客が来ていない状態だというのだから、10時以降が思いやられる。
しかし、早朝の公園は地元の市民が親しんでいるようで、たくさん子供づれやら犬づれやらがいた。
お花見のお弁当はお昼だとばかり思っていたが、ここでは朝食である。
出店もちらほら開き始めたところだ。
花の下でブルーシートを広げて宴会するグループとかが全くないのが早朝らしい。いや、そもそもシートの上で宴会するような場所でもないのかもしれない。
さて、高遠城址公園。
思っていたより小ぢんまりしていた。
国道361号線から遠くにピンク色の小山が見えるね、と言って指差していた小山が高遠城址だった。ゆっくり写真を撮影しながら回っても1時間かからない。いや、もちろんじっくり撮影するつもりになれば1日いても足らないかもしれないんだけど。
タカトウコヒガンと呼ばれるここの桜は、普通の小彼岸桜よりも花が大きく、木も大きくなる。
確かに、じっくり見ると、きっと可憐にちがいないと想像していた小さな花よりもかなりくっきりはっきりした花だった。
  
入るとすぐによく写真で見る「桜雲橋」があり、カメラに収めようとたくさんの人がいる。我々も撮影して、それから橋の下に回り、桜よりもイチゲの花を発見したりして散策する。
ぐるっとまわって「白兎橋」に出ると、桜の波の向こうに中央アルプスが見えた。ここでもみんながカメラを構えている。
うーむ、自分もその一員なのだが、すごい。
すごいが、どうもピンとこない。
私達は桜は好きなのだが、あまりにたくさんありすぎるとどういていいのか分からなくなるタイプらしい。
つまり、お花見桜は苦手なのだと気がついた。
であるとしたら、この公園はそこそこにして、次に行こうではないか。
入り口で配布していた公園の地図を開いて、次の目的地勝間のしだれ桜に一番近いゲートを探した。

  広場と売店の様子

  さくらの名所100選の碑
  


高遠城址公園の南ゲートを出ると、すぐ右手に信州高遠美術館がある。
我々は桜が目的なので、美術館は素通りだ。その裏手に高遠湖から流れ出る三峰川を渡る白山橋があり、それを渡れば国道152号に出る。
勝間のしだれ桜は国道152号を高遠湖沿いに歩いて高遠さくらホテルのむかいの小高い場所にある。白山橋の上からすぐにホテルが見え、歩いても充分な距離だと思った。
勝間のしだれ桜を見るには高遠さくらホテルの駐車場を利用しなくてはならず、さて、そこに入れるとまた駐車料金を取られるのかしらん、という懸念があったので歩くことにした。
途中、高遠湖畔の桜などを見ながらのいい散歩になった。
    
   高遠湖畔の桜。湖のグリーンに映える。
  
   ちょうど山々に日が当たった。あれはなんという山だろう。





勝間のしだれ桜
白っぽい花なので、
曇り空に溶け込んでしまう。
青空のもとで見たかった。



五郎山の登山口から見ると、
山が背景になり、
若い色の濃い木が手前になるので、
ボリュームが出る。



五郎山登山口の
しだれ桜
鳥居のすぐ下は水田であるはずだった。
が、どういうワケかビニールシートが
張られてしまって、絵にならない。
でも、しだれ具合が幽玄な桜である。
高遠さくらホテルから、田んぼの間の細い道を行く。
国道からしだれ桜までの道は自動車侵入禁止になっていた。
民家の庭の花などを見ながらやや登りの道を行くと、遠くからこんもりと見えていたしだれ桜が迫って来た。
こんもりと見えていたのは、薬師堂を挟んで右と左に2本しだれ桜があったからだった。
国道を背にして、薬師堂に向かって立つと、左側が白っぽい花の古木。右側がピンクの若い木のように見えた。が、我々が行った時には右側の木がまだ咲いていない状態だったので、よりピンクが強く見えたのかもしれない。
説明文によると、樹齢130年以上の木であるというが、大きさといい、枝垂れ具合といい、それ以上の風格がある。
薬師堂の下に道がついていて、ぐるっとガードレールが桜を囲むように見えてしまうのが難点。しかも、電線も横切っていたりする。
しかし。この枝垂れ桜の位置から高遠湖の方を見下ろせて、眼下にピンクにかすむ高遠城址を見ることもできる。これはなかなか素晴らしい。
  
      上の写真、左中央のピンクが高遠城址公園。
高遠城址に来て、この勝間に来ないのはもったいないと言えるだろう。
また、このしだれ桜にはオマケもついている。
ちょうどガードレールが写っている下の写真の位置からくるっと振り返ると、墓場があって、そこの桜がまた形がいいのだ。
  
       道端のガードレールと桜はこんな位置関係。
見事なピンク色で、背景の山から浮き出ている。花の色からしたら、こっちのほうがしだれよりも勝っている。
つい、お墓にペコペコお辞儀をしながら踏み入って撮影してしまった。
  
        お墓の中の桜。いい色でしょう。
さらに、国道に下って戻る時にちょっと左寄りに下って行くと、五郎山の登山口があり、その鳥居のそばに幽玄なしだれ桜がある。
我々が行った時にはまだ1分咲きくらいだったが、田んぼのそばで登山口を守る姿が神々しくさえ見えた。
そこから見える勝間薬師堂の桜たちが、またいいのだ。
手前に若い木が来るので、ピンクが際立って、ボリューム豊かに見える。
ちょっと歩くが、これもいい風景なので、ぜひ行ってみて欲しい。


心置きなく高遠の桜を見終えて、午前9時前には駐車場を出た。
この後の予定は明確にはたてていない。
とりあえず写真集にあった伊那市の桜でも探してみよう。





川手の桜(仮)
さすがカメラマンがみつける桜は
写真写りがいい(笑)。
幹の黒さと花の白さが抜群だ。
これで空が青けりゃなぁ。
高遠城址出て国道361号を伊那に向かって進むと、三峰川を渡る橋がある。この橋を渡ってすぐの道を三峰川沿いに走って行く。国道よりも見通しがよく、まっすぐで快適な道である。
左に流れている三峰川沿いには若い桜の木が植えられているが、しばらく走って行くと、道を横切る土手のような地形の場所があり、その土手に古い木の桜が並んでいるのが自動車でもよく分かる。その中にの
1本が手持ちの写真集に載っていた桜である。
道を挟んで左右に土手が走り、桜も左右に分かれている。写真の桜は高遠から伊那に向かって走った場合右手にある。手前土手の下に広い駐車スペースもあるので、楽々撮影できる。
ちなみに、この土手、どうも三峰川サイクリングジョギング道路というらしい。
伊那市の工場で働く人たちなのか、外国なまりの女性たちが桜をバックに写真を撮りあっていた。ちなみに、ダンナもシャッターを頼まれていた。
ほのぼのとうららかな桜だった。
  


今回のさくらめぐりのメインはもちろん高遠城址の桜だったのだが、もう1本絶対に見たい桜があった。
樹齢1000年とも言われている中曽根のエドヒガンである。
ちょうど新潟への帰り道の方向にあるので、写真集の簡単な地図を頼りに探してみた。




権現桜
あいにく雨が落ちてきてしまった。
まだほとんど咲いていない状態である。
それでも、ものすごい存在感だ。





だいたいこのあたり、という場所まで行くと、小さな「権現桜」という案内看板が出ていた。
名まえのついている有名桜には案内看板があるのがありがたい。
桜であればピンクを頼りに見つけられるかと思えるのだが、住宅街やら山間にあると、意外に見つけづらいのである。
さて、「権現桜」こと中曽根のエドヒガン。
この木も込み入った農家の並ぶ真ん中にあり、遠目では分かりづらいものだった。
中曽根のバス停のそばに公民館のような建物があり、そこに駐車できる。そこから路地に入ってすぐに家が途切れて、大きな木が現れる。
おお、まだ1分くらいしか咲いていないが、幹の太さが圧倒的な存在感のある木だ。
空洞化した幹には詰め物がしてあって、雨水から保護されている。大抵の桜は、そういう措置が痛々しく見えるものなのだが、この桜はなにかしら誇らしげにも見えた。
狭い道から桜に出ると、その背後は畑が広がっていて、遠く雪を頂いた山ものぞめる。
雨がポツポツ当たる天候だったためか、見学者はほとんどいない。満開になったら、もう少し見に来る人がいるのだろうか。
あまり見に来る人がいないのが、もったいないくらいの、威厳ある老木だった。
  
     節くれだった幹が、木の生きてきた年月を感じさせる。
  


さて、権現桜も見たことだしこの後の予定は本当になんにもない。
だが、時計はまだ、なんと午前10時前なのである。このまま新潟に帰るのはあまりにももったいない。
では、写真集で見事な枝垂れ桜が水面に写っていた「安養寺」というお寺に寄ってみよう。開花の確認はしていないが、他の桜と比べて遅いということもないだろう。
国道19号を北上して松本方面へ自動車を走らせた。




安養寺のしだれ桜
ここの枝垂れを撮るなら
裏手の水田の対岸から、というのが定番。
カメラマンが並んでました。



水田の中の色の違うところは
足跡です〜。

「安養寺」は、松本から上高地へと向かう国道158号線沿いにある。
はっきりした場所は、実はよくわからなかったのだが、見つけられないかもしれないという心配は必要なかった。
とにかくピンクだ。
国道上から右側にピンクの塊が見えれば「安養寺」と言ってもいい。
駐車場は無いと書いてあったので、路駐かと思っていたが、寺の入り口を通り過ぎて少しした場所に「松本法要センター」というのがあって、その広い駐車場の一部が桜鑑賞の人のために解放されていた。
歩いて5分とかからない「安養寺」に行く。
国道からではなく裏手から入って行った。
ところが、「安養寺」、ただ今改修工事中だった。見事なしだれ桜の木が境内の真ん中にすっくと立っているのだが、その周りは掘り返されていたり、切り倒された木の切り株があったり。
あらまあ、なんと殺伐とした風景だこと。
それでも桜はほぼ満開状態で、気持ちをなごませてくれる。
  
ここの桜は横に水田があり、水が張られたその水面にしだれが触れるばかりにおりていて写りこんでいるのが美しい。我々もそういった写真を見てこの寺に来たのである。
水田のほうにまわると、カメラマンがあちこちで水面の桜を狙っていた。
それにしても、水田。これがまあ、しっかり水田で、これから田植えをするために水を引いてあるので、泥の底にはしっかり足跡があったりする。写真集にはこういうリアルな農耕臭は無いよなぁ。


安養寺の桜も見終え、ちょうどお昼時になった。
どこかでお昼を食べたい。できれば滝の前で(お花見ではなくてスミマセン)食べたい。
ということで、以前冬にチャレンジして行くのをあきらめた「黒沢の滝」に向かうことにした。旧三郷村にあるその滝は「安養寺」からは県道25号を通って行けばそれほど遠くは無い。(滝のレポートはこちら



墓守の桜たち


遠くからでも目に付いた
背の高い枝垂桜。
一族の墓守である。



いかにも信州の桜。
百年以上墓と山と畑を見守ったのだろう。。

県道25号を黒沢の滝に向かって進むと、道端にとても背の高いしだれ桜をみつけた。遠目でも立派な桜で、つい自動車をとめてしまう。
この桜、写真ではできるだけカットしているが、ぐるりとお墓に囲まれている。しかも、古いお墓ではなく、立派な真新しい墓ばかりである。
同じ姓お墓が多く、一族のものと思われる。それを長い年月守ってきた墓守の桜なのである。
ふと、その桜のとなりに目をやると、こちらは背こそ高くないが、太い幹をした古木があった。
おそらくりんごと思われる小さな果樹園の真ん中に立っている。
こっちなら墓じゃないから、気兼ねなく撮れる。
ちょっと失礼して畑を通って桜の前に行った。
小さな祠なんかが足元にあって、実にいい雰囲気の桜だ。
撮影しているうちに、道路とは反対側に石碑があるのをみつけた。ダンナがその文字を読むと、あ・・・先祖代々・・・
これも立派な墓でした〜。こちらは古い墓だが、この桜も墓守の桜だったのだ。
この後、滝を挟んで県道25号を走って行くと、立派なしだれが何本もあり、足元にはしっかりお墓が並んでいた。
この地方にはお墓にはしだれ桜がつきものみたいである。
墓を守ってもらっている分、桜も大事にしているのだろう。
長野に桜の名木が多い理由の一つがわかったような気がする。
  
         このごっつい幹の向こうに古いお墓がある。






糸桜
桜の木だけを撮影して、
大事な杭を撮影しなかった。
どこのなんという文化財かわからない。
糸桜というのだけははっきりしている。

今回の桜の最後は「糸桜」である。
これも実は墓の向かいにある。
だが、これの足元にはお墓はなく、村の指定文化財であるという杭が立っていた。
旧三郷村から堀金村に向かって県道25号を走って行くと、二股にわかれた道路のちょうど又のところに立っている。
V字になった枝が特徴的だ。
この県道25号は前の墓守の桜の項目でも書いたが、とにかく枝垂れ桜が多い。
ただドライブするだけでいくらでも桜の古木を見ることができる。
桜好きオススメの道である。
ただし、駐車スペースがあまりないので、路肩に止めるしかない。
充分に注意して、お墓に失礼のないようにしながら桜を愛でよう。

まだ午後1時半だったが、充分に桜を堪能した。
あとは、温泉にでも入って、新潟に戻ろう。(温泉のレポートはこちら
ずっと雲がとれなかったのが残念だったが、長野の桜の奥深さを知ったよい旅だった。


 
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