八ツ淵の滝


八ツ淵の滝
八ツ淵の滝は、八つの淵(滝)の総称である。
その全てを見て来たのだが、
唐戸(からと)の淵だけは、見下ろす形だったので
映像がない。


魚止(うおどめ)の淵
滝コースを進むと最初に現れる。
思った以上に大きくて綺麗な滝だ。
流木が流れを複雑にしていた。



障子(しょうじ)ケ淵
滝コースの最大の難所である。
なにせ、この滝の直下を渡らなければならない。
数段に折れて落ちている豪快な滝である。



大摺鉢(おおすりばち)
広い淵で、滝を訪れる人の憩いの場の
ようになっていた。
対岸にも渡れる。
渡ると大正時代の知事の書いた
『八徳』の文字が彫られた岩があるらしい。



小摺鉢(こすりばち)
大摺鉢の上流にある。
大摺鉢よりはこぶりだが、下の写真のように
開けた場所になっている。


あちこちに木の橋が渡されていて、
水遊びなどができるようになっていた。




屏風(びょうぶ)ケ淵
崖の上の道から身を乗り出すようにして見る。
岩によって二つに分けられた水が
また合流して落ちていく。
綺麗な滝なのに、ビューポイントが少ない。



貴船(きぶね)ケ淵
八ツ淵の滝の中でもっとも大きな滝である。
落差30メートル。
轟音があたりを満たしていた。
これは、対岸に渡ってからの写真。
この位置に鎖が渡されていて、
岩の上をジャンプして渡るのである。


貴船の滝の流れ。
あちこちにぶつかって、複雑に流れている。




七遍返し(しちへんがえし)淵
上から見ると、水が七回回転しながら
落ちてみえるからこの名前がついたらしい。
下からはそんなふうには見えなかった。


七遍返し淵の流れ。
幾条にも分かれて落ちている。


立ち去るのが惜しいくらいの、
すばらしいプレゼントである。

2003/9/14 八ツ淵の滝 滋賀県
当初、この日は県外の滝を見に行く予定などなかった。しかし、諸処の理由が重なって、いきなり前日の夜9時に宿を予約、なんと、滋賀県にまで来てしまった。なぜ滋賀県か。理由は簡単である。百名滝の一覧のページの右半分がほとんど未訪で印が無いからである。ぜひとも右側に丸印をつけたい、との一心である。
そうして、滋賀県にたどりついた。
八ツ淵の滝は入り口がガリバー青少年旅行村というアウトドアレジャー施設の駐車場になっている。だから、という理由ではないが、かなり気楽に考えていた。なにせ、子供でもホイホイ行けてしまいそうなイメージがある。高島町に入るとイヤでも目につくガリバー青少年旅行村の案内どおりに行くと、駐車場に着いてしまう。そこの駐車場の管理人に八ツ淵の滝に行きたいのだが、と言うと、「みなさん滝に行くと言って駐車されるんですが、まだ戻って来なくて満車です」と言われて、やや下にあるバスのロータリーを案内された。時間は午後2時である。まだ戻ってこないって、いったい、何?
そこで駐車代400円を払ったら、八ツ淵の滝のパンフレットと注意書きをくれた。注意書きには、『この駐車場はガリバー旅行村の駐車場である。滝にもう少し近い駐車場もあるが、そこは旅行村のためのものである。どうしてもそこに駐車したければ入村料一人400円を支払いたまえ』という趣旨のことが書かれてあった。ついでに、滝までは山道なので、サンダルやヒールの高い靴では行けない。とも書いてあった。
とりあえず、鎖場があるらしい、というのは写真集などで予備知識はあった。で、パンフレットにも危険な場所があると書いてある。でも、まあ、旅行村のそばにある滝なんだもん、子供でも行けるんだとどこかで信じていた。あいかわらず、甘かった。
旅行村の駐車場近くにハイキングコースの案内があり、我々が行く滝のコースはDコースとある。その所要時間は80分。ふむ、80分で帰ってこれれば楽勝ではないか。これも、甘かった。その掲示板に山沿いの左側の道へ行きなさいと貼り紙してある。

 
案内板。黄色いコースが滝を見るDコース。貼り紙がでかい。

 
ハイキングコース入り口。入山届けの箱の下にやっぱり貼り紙。

さらに入山する道の入り口にもしつこいくらい同じ貼り紙がある。パンフレットにも初心者は山沿いのコースをとるようにとある。だが、そのコースを選ぶと滝を2つ見逃してしまうことになる。
山には慣れていないが、とりあえず、滝に関しては初心者ではなかろう。迷わず沢沿いのコースを選んだ。
正直言って、滝好きはこちらのコースを選ぶべきだと思う。それほどすばらしい滝なのだ。が、やっぱり貼り紙とパンフレットは嘘をついていないということを実感するコースでもある。
まず、沢に出たところに名前のない淵がある。これが魚止めの淵かな、と思ったが、そうではない。しかし、小滝の連続する淵でなかなか美しい。この淵を腐りかかった木の橋で渡り、いきなり急な登り。これは大変かもねー、と気楽に考えていたら、目前に魚止めの滝が現れた。なかなか豪快に落ちている滝である。この滝が口開けの滝なら、八ツ淵の滝はかなり期待できる。などと思っていたら、この滝をまくために鎖にしがみつきながら、岩のふちを渡らなければならなかった。どひゃー。それからまた急に登り、魚止めの淵を見下ろす。下から上から見られるなんて、素晴らしい。

 
最初に現れた名も無き淵。

 
この木の橋、けっこう怖かったです。

 
魚止の淵を上から眺める。

素晴らしいのはいいが、その後がまた大変だった。目の前にドドーンと障子ケ滝が現れる。これがまた圧倒的な水量のある素晴らしい滝なのだが、その滝つぼ付近の川をジャンプで渡って、岩に打ち込まれた足場を鎖を頼りによじ登らなければならないのだ。川のジャンプは、対岸からダンナが鎖を投げてくれて、それを頼りになんとかクリア。岩を登るのは、大丈夫。下さえ見なければ登ることくらいできる。
反対側から下るコースを選んだ人が岩の上から呆然と眺めていたが、下るのはムリだろう。ものすごく怖い。登りはただ目の前の岩を見て鎖にしがみついて足を上に出せばいいだけだ。結局呆然と見ていた人は引き返して行った。それがいいと思います、はい。
岩に登りついたらついたで、そこから上がまたものすごい角度の登りだった。そしてふいに初心者コースに合流した。

   
 
左の写真の岩の中央からロープがたれているのがわかるだろうか。そのロープの下のはじっこから少し左に寄って下がっていくと黄色い足場が打ち込まれている。で、右の写真がその足場の前にいるダンナである。滝の水の大きさと比較して、とんでもないコースの雰囲気を味わってもらえると嬉しい。
 
かなり下から見た障子ケ淵。中央の岩に人間がとりついているのがわかるだろうか。それが、コースなんです。はい。

 
上から来た人が鎖場を呆然と見下ろすの図。降りたくはないやね。

これで危険な道のりは終わったと安心していた。とりあえず初心者コースになったわけだし。
障子ケ淵の急な登りで滝の案内が載っているパンフレットをなくしてしまったが、ま、なんとかなるだろうと思った。
確かに、大摺鉢、小摺鉢のあたりまでは、楽勝のコースである。仲のいいカップルが水に足をひたして、きゃー冷たい、なんて言っている。のどかな風景だ。
が、そこから上流は、どう登るのだ?という山道になる。時々姿を現す鎖を頼りに急な坂をよじ登ると沢の上流に屏風ケ淵が姿を現す。崖の上からちょっと身を乗り出す形で見事な造形の滝を眺める。
そこから、おい、ちょっと待てというカンジの崖の岩場を壁にへばりついて通る場所を通り抜けると、八ツ淵の滝のハイライトともいうべき貴船ケ淵にたどりついた。
ものすごい滝である。落差30メートルというが、それ以上に感じる勢いのある滝である。何人もの人が滝の前にいて、写真を撮影していた。我々もしっかり撮影。撮影してから、しばし、絶句した。
鎖が滝つぼ付近にたれさがっている。つまり、これ、降りろってか?その鎖が対岸に向かって張られている。つまり、この川、渡れってか?
これで滝が終わりであればすぐに戻った。それほどちょっと進みたくない風景だった。が、なくしたパンフレットに、確か七の文字のつく滝が最後だと書いてあった。貴船には七はついていない。
ちなみに、ここには何組もの人がいて、これがまたサクサクと鎖をつたって降りていくのだ。みんな元気だ。仕方なく私もダンナに続いて鎖にしがみつつ岩場を降りた。それからまた鎖にしがみつつ、水がジャバジャバはねている川を岩をとぶようにして渡った。
が、一息つく暇もない。ここから滝の上まで行くようである。目の前に古びた鉄製の梯子がある。鎖よりもしかしたら怖いかもしれない。これをクリアすれば楽になるかしらん。
甘い。梯子を上った先には壁があった。
すぐ横を貴船ケ淵がゴウゴウと音をたてて落ちていっている。つまり、丸まんま貴船ケ淵の横の壁を鎖をつたってよじのぼれ、と言うのだ。

 
プチ・ロッククライミングの壁(笑)。た、高い。

 
貴船の落ち口。人が上に写っている。この横の岩を登ったわけだ。

何度も言うが、登ることは出来る。登りながら、帰りの心配が頭をもたげた。これを下るのか?これってば、プチロッククライミングって言わないか?
登りつくと、貴船ケ淵の落ち口にでた。実にゆるやかでやさしい風景だ。その中に遭難の碑がポツンとある。遭難者がいたんだ、と、つい貴船ケ淵のほうを振り返った。プチロッククライミングを終えたカップルが楽しそうに水に入っていた。
さて、七のつく滝はどこだ?パンフレットを持たない我々はその場所も距離もわからない。とにかく道が続いている限り滝に着くまで歩くしかない。
貴船ケ淵の先になると、ほとんど人がいなくなってしまった。途中、山から下山してくる人がポツポツといる。関西弁のおばちゃんたち8人ほどのパーティーがもう7時間も歩いているねーなんて話しているのにもすれ違った。そんな山なんだ、ここは。
しばらく歩くとやっと案内板が出てきた。が、滝は見えない。この上か、この先かとさらに歩いて、やっとのことで七遍返しの滝に出た。
看板に『この風景があなたへのプレゼントです』とある。
この滝まで来る人はあまりいないのであろう。そう考えると、本当にこの滝の風景がプレゼントに思えた。

 
みつけたときは、涙が出そうになりました(笑)

いよいよ、帰り道である。
あとでパンフレットを見て、貴船の横の壁は迂回するコースもあると知ったが、なにせその時はパンフレットを無くしていた。腹をくくって降りる。腹をくくって、川を渡る。腹をくくって、鎖にしがみつく。小摺鉢まで来ればあとは、初心者コースである。大摺鉢の下流に唐戸の淵の看板をみつけたが、見下ろすカンジになって滝には見えなかった。
さらに下って、沢沿いのコースへの分岐点でダンナがそちらに行こうとした。おい、こら、そっちへは行きたくないぞ。いや、ダンナはそのコースの入り口に落ちているものを拾ったのだ。なんと、私が落としたパンフレットだった。こんなところに落としていたのね。役にたったのか、たたなかったのか、とにかくこいつも無事に手元に戻ってきた。
あとはなだらかな山沿いのコースを歩いて降りるだけである。
駐車場に戻って驚いた。もう5時である。たしかコースに入ったのが2時半。2時間半も歩いているじゃないか。こら、所要時間80分てのは嘘か?いや、片道のことか?
とにかく、写真を撮影しつつだったので、普通の人よりは少し時間がかかったかもしれないが、しっかり2時間半は必要である。それと、きちんとした登山用の靴と軍手も絶対に必要である。沢沿いのコースを選ばなくても、貴船ケ淵まで行くつもりであれば、やはり鎖場は必ず通る。八ツ淵の滝に来たのであれば、やっぱり貴船ケ淵は見てほしいものだし。充分な時間と充分な装備で挑んでほしい。
が、アドベンチャーを楽しむつもりであれば、この滝はオススメの滝である。次から次へと滝があらわれ、その滝に行くまでに必死になって道を進む必要がある。時間がたつのを忘れてしまう。ただし、やっぱり危険であることには変わりない。充分に気をつけて慎重に進んで欲しい。


リンク  高島町
交通
我々は日本海がわから行ったが、最寄のICで一番近いのは、名神高速道路・京都東ICから乗り継げる湖西道路の終点・滋賀である。そこから国道161号線に出て、湖沿いに北上。高島町に入る。あとはもう、イヤでも目に付く『ガリバー青少年旅行村』の看板に沿って進めばよい。
途中、集落の家が込み入った細い道を通るので、注意が必要。
『ガリバー青少年旅行村』の入り口の駐車場に小さな小屋があって、おじさんがいるのでそこで『八ツ淵の滝』に行く旨を話して、駐車料金400円を払おう。パンフレットをくれる。
そこから坂道を5分ほど登って、右欄の一番上の写真の看板のあるところに出る。Dコースは所要時間80分とあるが、滝コースを取る場合は倍かかるので、その数字は信じないように。看板からさらに少し登ると、写真の入り口の所にでる。登山しないので、登山届けは必要ないだろう。
以下に私たちの通った時間を記しておくので、参考にしてほしい。(写真を撮影しながらの時間ですので、本当に参考までです)

 登山届けのある入り口   14:30
 滝コースから沢に出た所   14:47
   朽ちかけた木の橋や急斜面あり。
 魚止の淵   14:59
   川をジャンプして渡る
危険箇所あり
 障子ケ淵   15:02
   鎖だけが頼りの岩登りあり。

   ものすごく危険

 大摺鉢   15:25
 小摺鉢   15:27
   道が分かりづらくなるが印や鎖はある。
 屏風ケ淵   15:33
   崖の岩にへばりついて進む
危険箇所あり
 貴船ケ淵   15:40
   滝の下流の川を鎖をたよりに進む
   
危険箇所あり
 貴船ケ淵のわきの壁   15:49
   ほぼ垂直の壁を鎖と木の根っこを頼りに登る。
   
超危険
 七遍返し淵途中の案内   15:59
   なだらかな道だが、道がわかりづらい。
 七遍返し淵   16:05
 まっすぐ山コースを通って入り口に戻りつく   16:58


パンフレットによれば、七遍返し淵から帰る場合、途中に分岐する道があって、山の中を通って大摺鉢の下に出る道もあるらしい。この道だと、貴船ケ淵の脇のプチ・ロッククライミングを降りなくてもよくなる。しかし、気がつかなかったので、道としては利用する人は少ないのかもしれない。


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