んがお工房の桜めぐり


2006年長野の桜めぐり2

2006年4月29日(土)
前の週の高遠城址公園に引き続き、長野の桜を見ることにした。実は福島に行くかどうか少しだけ迷っていたのだが福島の三春の桜たちはおおむね散りかけていた。天候も長野のほうがよさそうだ。それに、今回行こうと決めた高山村は、今年必ず行くのだとネットで調べて勝手に決めた場所なのである。その高山村の桜が咲き始めた。二週連続の長野になろうと、ひるむことはない。
幸い、高山村は高遠よりもずっと新潟県に近い。前日に宿泊する必要もなく、ETCの通勤割引のきく時間帯に出発すればよかった。
インターネットで入手した高山村のしだれ桜の地図を手に、上信越自動車道小布施パーキングから出る。そこからが一番高山村に近い。
          高山村のHP



高山大橋南の
しだれ桜

道路標識の案内どおりに高山村を目指したつもりだが、いつどこで村に入ったのかさっぱり分からなかった。
道路右手に階段状の三角屋根の「一茶ゆかりの里」の建物を発見して、初めて現在位置がわかった。
そこを通り過ぎて、すぐに第一しだれ桜発見。
自動車を道路の広くなっている場所にとめて、みごとな木を見上げる。
かなり大きな木で、足元に墓石が並ぶ。
これも墓守の桜である。威風堂々、墓を守り続けている桜だ。
桜を見ていると、関東ナンバーの自動車が同じ場所に止まり、新潟から来たのかと訊ねてきた。高山村の桜を見て、これから新潟に向かうそうだ。今の季節の新潟になにか魅力があるかな、とぼんやり考えながら気をつけてと見送った。
  
       カーブミラーの奥に見える三角屋根が一茶館である。
次にどこに行くか、ようやく現在位置がわかったので、一番近い桜を見るつもりで、少し戻った。「紫のしだれ桜」を探すためである。
神明神社は見つかったが、肝心のしだれ桜がわからなかった。住宅が立て込んでいる場所なので、桜の木がわからないのかもしれない。
ついでながら、一茶館の裏にあるはずの「菫のしだれ桜」もみつけられなかった。
  




坪井のしだれ桜

結局小さい桜は案内標示もなく見つけるのは困難であるということが分かったので、とりあえず高山村の五大桜を片付けることにした。五大桜なら案内が出ていそうだ。
高山大橋を渡り、(ちなみに、高山大橋から小布施寄りの県道66号沿いにある「西光寺のしだれ桜」、「つつみのソメイヨシノ」は最初からパス)まずは坪井のしだれ桜を目指す。
さすがに五大桜だけあって、県道から入り口が書かれてあった。
左手に山田神社が見えたらその手前の道へと左折。さらに左折するように案内がある。
神社のあたりに駐車できそうなスペースがあり、そこで自動車をおりてしまいそうになるが、道はまだまだ長い。
仮設のトイレのある駐車スペースがしっかり作られているので、そこまで行こう。
駐車スペースから徒歩で5分も歩かずに坪井のしだれ桜が見えてくる。
惜しいかな、まだ三分咲きくらいだ。
この桜も足元に墓石が見えた。まるで墓を覆うように枝を四方に広げて落としている。
桜を見に来た親子連れがお墓に手を合わせているのが印象的だった。
  

       右端に坪井のしだれ桜。
         杉の大きさから、桜の木の大きさがわかるだろう。
  




横道のしだれ桜

さて、事前にチェックしていなかったのだが、坪井の桜の道の奥に「横道の桜」と書かれた看板があった。
近そうな雰囲気である。
自動車まで戻って地図で確認して自動車で向かってもよかったのだが、歩いて行くことにした。
案内看板の矢印のほうに進む。ちょうど坪井の桜の裏にある杉林の向こう側の道である。だんだんと下がって行っている。下がりつつ、けっこう歩く。
杉林がとぎれた辺りでおばあちゃんが畑仕事をしていたので、横道の桜はまだ遠いのかと訊ねた。
すぐそこだという返事とどこから来たのかと訊ねられた。新潟からだと答えるとわざわざ見に来てくれたのか、横道の桜のほうがずっと坪井の桜より見栄えがすると教えてくれた。
礼を言って歩き出す。
と、道の向こうがわ、畑とおばしき広い土地の上に見事な桜が立っていた。
あ、本当に三分しか咲いていない坪井の桜に比べたら、ずっと見事だ。
しかも、どうだろう、広い土地のほとんどをオオイヌノフグリが埋め尽くしていて、まるでブルーの絨毯のように見える。
道から桜までは離れていたが、畑の畔のような場所を通って近づくこともできた。
おや、これも墓守の桜だ。
信州の桜は墓守という仕事を持っているようだ。
  
       手前のグリーンがやや青っぽく見えるのは、
       すべてオオイヌノフグリである。
結局かなり時間をかけてこの桜を見た。自動車で来たとしたら、裏側のブルーの絨毯を見損ねたかもしれない。帰りは坂を登ることになったが、徒歩で行ったのは、よい選択だった。



中塩のしだれ桜

次は五大桜の「中塩のしだれ桜」だ。
こちらも県道66号からしっかりと案内が出ているので迷わない。公民館の駐車場のような場所に入る。
そこからだと一段高い場所から中塩のしだれ桜を見ることができる。
赤い屋根の阿弥陀堂とお地蔵さんがなかなかのどかな雰囲気だ。
ここにはかなり力の入ったカメラマンさんがいて、光の具合などをじっくり待っていらっしゃった。
  

      逆光でよく分からないが、足元にお地蔵様がいる。




黒部のエドヒガン


続いての五大桜は、黒部のエドヒガン。
実は密かに楽しみにしていた桜である。というのも、ほとんどがしだれ桜の高山村で、エドヒガンとは珍しいのである。
村内第一の巨木だそうだし。樹齢350年とも500年と言われているし。
だが、しかし、まだまったく咲いていなかった。
咲いていない桜の木は寂しいばかりである。
それでも棚田になった周りの一部を駐車スペースにして、かなりの見物客があった。
この桜は少し高台にあるし、種類の違う桜なので咲く時期が異なるのだろうか。ちょっぴり残念だった。
  

      真ん中やや下に濃いピンクの塊があるのが黒部のエドヒガン。
        遠くに雪を頂いた山並みが見え、
        眼下に高山村の町並みを見下ろす。



皇太神社の
しだれ桜
黒部のエドヒガンは田んぼの真ん中にあるのだが、そこに至る道が細い。そのために行き帰りの道を別々にする措置がとられている。
いったいどこに向かうのかな、この帰り道は、と思っていると、前方の道にふんわりと覆いかぶさる桜の木が見えた。
これは見事だ。
思わず自動車を止めた。
数人の見物客がいて、カメラを向けている。
地図を見ると、「皇太神社のしだれ桜」だと分かった。
道から見えるし、道のすぐ脇の神社なので、路上駐車しがちだが、桜を少し通り過ぎて右折すると3台ほどの駐車スペースがあるので、そこまで行ったほうが迷惑にならない。
  

      こんなふうに道に枝が張り出している。 



歴史民族資料館の
ソメイヨシノ
つづいて、どういうわけか我々は松川を上流に向かって遡った。この川沿いにもいくつかの桜があるのである。上流から片付けてしまおうと思ったのだ。
その途中でこんもりとしたソメイヨシノを発見した。
歴史民族資料館に並んでいる桜である。
ちょうどいい具合に綺麗なトイレもあったのでトイレ休憩。
それからもう一度地図を確認し、どうせ松川の上流には滝を見に行くので、そっちは後に回そう、ということになってしまった。
またしても自動車を戻す。
戻すついでに酒屋の前で缶コーヒーでも買おうと止まったら、湧き水を発見してしまった。
  

      酒屋藤田屋さんの入り口脇にある銘泉。
        銘酒藤乃川醸造水だそうだ。
        たっぷり汲ませていただきました。




十王堂の
しだれ桜


それでは、五大桜を見る行程に戻ろう。
とりあえず歴史民族資料館から一番近いのは、赤和観音のしだれ桜だ。そちらに向かって自動車を進めた。
途中に十王堂のしだれ桜というのもあるので、それを拾いながら行こう。
十王堂のしだれ桜はすぐに分かった。
見た目にもはっきりと白いとわかるしだれ桜である。
十王堂の前にお地蔵様のお堂があって、こちらにはピンクの桜がしだれている。
2つそろって、なかなか綺麗に咲き誇っていた。
十王堂はなんとなく白っぽい建物なので、白いしだれとよく似合う。
この桜も駐車スペースが一見ないように見えてしまうが、お堂のまん前まで自動車で入ってしまうと、すぐ右手にゲートボール場があって、そこに駐車できるようになっていた。仮設トイレもある。
この白いしだれ桜はほとんど地面まで枝をのばしているのだが、そのカーテンに囲まれたような空間に座り込んで、ずっとスケッチをされている女性がいた。
写真撮影するのに、ちょっと邪魔だなぁと思っていたが、それはこっちの勝手で、桜はなにもカメラマンのためのものではないのだ。
その証拠とも言わんばかりに、白い桜の花に蝶がヒラヒラと寄っては吸蜜していた。花は、ただ、花である。
  

      ルリタテハだそうだ。




赤和観音の
しだれ桜
五大桜である赤和観音のしだれ桜も道案内はしっかりしていた。要所要所に看板が出ていて迷わない。
迷わないが、なんだかどんどん登って行く道である。
けっこう高台まで来て、ほとんど山の中腹という感じのところまで来たら駐車スペースだった。
駐車場にいいにおいのするお蕎麦を売っている売店もあるのだが、肝心の桜のピンクが無い。山でも登るのかしらん、と思って山のほうを見てみると、あった。
あら、まあ、全然咲いていない。
こりゃあ黒部のエドヒガンより蕾が固い。
確かにかなり標高が高くなっているので、咲くのは遅いのかもしれない。
それにしても、ずっと山の上にある赤和観音から桜までの斜面が土砂崩れでもしたかのように赤土がむき出しになっている。
桜が咲いていない上に、この土砂むき出しの風景は、なんとも荒涼としすぎていた。
桜が咲いていれば赤和観音まで登ってみようかという気もおきたのかもしれないが、とてもそんな気にはならなかった。
桜の木もどうもこの冬の寒さのためか大きく傷ついてしまっているようだった。
周辺も含めて、早期に修復してほしいものである。

  

       ちょうど桜の木の真上あたりに赤和観音の赤い屋根が見える。




赤和集落センターの
しだれ桜
赤和観音の桜があまりにも荒涼としていたので、本来ならサラッと流してしまうはずの小さな木がとても綺麗に見えた。
赤和観音から少し下った場所にある集落センターに植えられた木である。なんとも古風な姿形をしていて、印象がいい。
周りも畑や田んぼなどで実にのどかだ。
実は赤和観音からこの集落センターまでの間にかなり立派なしだれ桜の木が見えたのだが、(恐らく篠原家のしだれ桜だ)行きの登りの道と帰りの下りの道が違ったので近づく方法が分からなかった。ちょっぴり残念。

  

       集落センターへの道では道祖神が桜を見ている。
次に向かうのは、五大桜の残りの1本水中のしだれ桜だ。一旦十王堂の近くの交差点まで戻って、村のメインの道を須坂方面に下る。
その途中で手作りパン屋さんにひっかかった。
清水ペーカリー(パン工房コルペ)という店で、天然酵母のパンとか、桜にちなんだパイとか売っている。
中でも学校給食みたいな食パンにジャムとかクリームとか挟んだものが懐かしいったらありゃしない。あげパンもある。
桜を見に行った際には、ぜひ立ち寄ってみてほしい。




水中のしだれ桜



水中のしだれ桜に行く前に、ちょっと自動車が渋滞していた。道が狭いうえに曲がりくねっている。
それに、どうやらこの桜が一番咲き具合がいいらしいのだ。
駐車場は桜のそばの棚田を利用したものがあり、何台もとめられるが、出る自動車と入る自動車が入り組んでいて整理するのも間に合っていない様子だった。
やはりこの桜がいちばん賑わっていて、売店なども数軒ある。
この桜は映画「北の零年」の冒頭で使われた桜ということで、桜の下のお堂の前に吉永小百合さんの写真が貼ってあった。
杉林を背景にスックと立っている姿もいいが、ぐるりと裏側にまわると、遠く雪を頂いた山々を見下ろす感じになってまたすばらしい。
桜の裏側は、やわらかい下草の生えた広場になっていて、カメラを構える人やらお弁当を広げる人やらがたくさんいた。
シートを広げて休憩するにはもってこいの場所である。
  

     売店から撮影した水中のしだれ桜。
       こちらがわからよりも裏がわからのほうがよく咲いていた。
 




和美の桜




五大桜もつつがなく見終えて、あとはすっかり帰るつもりになっていた。
とりあえず、通りしなに高山小学校のオオヤマザクラをおさえておこうとそちらに自動車を回したが、ソメイヨシノばっかりが目立ってオオヤマザクラがどれかわからない。
仕方がないので通り過ぎて、裏手の高山中学のソメイヨシノのトンネルを車中より見学。写真撮影はしていないが、見事だった。片側だけだったから、トンネルではなかったけれど。
そのまま進むと役場になって、バスだのが駐車している。
手書きの「和美の桜」という文字があった。
手持ちの地図には和美の桜というものはない。役場上のしだれ桜か、さもなくば二つ石のしだれ桜か。
ともかく、役場の駐車場にとめて、役場の向かいの一段高くなった畑に立っている桜をめざした。
「和美の桜」なごみのさくら、と読むらしい。細かい字で手書きでかかれた説明文は読むつもりに全くならなかったが、たくさんいた見物のおばちゃんたちが話しているので内容は分かった。
いわく、「この桜のまわりを三回半回って山にむかってヤッホーと叫んだから荒川静香さんは金メダルを取れた。だから、そうすると願いが叶う」のだそうだ。とほほ。三回半ってばいったい・・・。
桜は小ぢんまりとしているが咲きっぷりがよく、こんもりとした感じがいいものだ。しだれた枝の真ん中に入って行けて、桜のシャワーを浴びたような気持ちになる。
が、場所的にいい条件のためか、とにかく見物客が多かった。
  

      ほぼ満開の和美の桜。

あとで調べたところ、パンフレットやHPには役場上のしだれ桜と書かれているのが和美の桜だとわかった。
我々はここで桜見物が満腹になってしまい、二つ石のしだれ桜を探すのをやめ、高山村に来たら行かなければいけない「雷滝」、「八滝」に向かってしまった。(レポートはこちら
道すがらにある「明徳寺のしだれ桜」、「子安神社のしだれ桜」、「牛窪神社のしだれ桜」は皆、標高が高いせいかまったく咲いていなかったので、写真にも撮らなかった。

それにしても、高山村、パンフレットには全国番付でも「小結」級、と書かれていたが、いやいや、桜全体を見れば関脇くらいにはなっていると思います。しだれ桜の多い点で言えば、しだれ好きには三春についですばらしい土地ではないだろうか。1本桜好きにとっても、背景の山の素晴らしさを考えると、もしかしたら置賜さくら回廊よりも上かもしれない。
ただ、惜しいかな、咲く時期がまちまちだ。しかも、さらに惜しいかな、五大桜以外は道案内やネームプレートが無い。
我々のようにどうせ行ったのだから全部見倒してやろうという意気込みの人も多いと思う。せめて桜の時期だけでもこと細かい案内と看板が欲しいものだ。

今回咲いていなかった桜に標準をあわせて、また行ってみたい高山村の春だった。



 
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